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私は消化器内科病棟で7年間働いていました。病棟の特徴として末期の癌患者の入院が多いですから、200例以上の患者の死に立ち会ってきました。

「看護師って人の死に慣れてるもの?」

私の考えから言えば、人が死ぬという状況にはさすがに慣れました。私がいう状況というのは、患者の状態が徐々に落ちていき、息を引き取るときから出棺される時までの流れのことです。しかし、その時の患者の年齢、性別、疾患、病歴、家族との関係はみんな違います。

看護師普通

当然患者と看護師の関わり方もさまざまですので、たった数日でも関わりをもった患者がいざ亡くなるということに関してはなれることができませんでしたし、看護師を初めて何年経とうとも、自分が初めて関わった患者の死、自分が初めて夜勤を始めた時に亡くなった患者、自分を頼りにしてくれたり、可愛がってくれた患者の死は決して忘れることはありません。

先輩看護師について、初めて患者の死を目の当たりにしたとき、私は泣き出してしまいました。もしかしたら家族以上に涙を流していたと思います。人が亡くなるという事がただただ怖かったし、寂しかった。

この時は泣いてしまったため、その後の仕事が手につかず先輩に二つのことを言われました。「看護師は泣いてちゃいけない。でも患者の死を初めて目の当たりにして悲しいと思ったその気持ちは忘れちゃいけないし慣れてもいけない」と。新人の私にそんな両極端のことを言われても難しいと思いましたが。

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「じゃあ患者の死をどうとらえたらいいの?」

看護師困った顔

いつからか私は、患者の死を辛く悲しいものではなく、患者とその家族が辛く悲しい状況から解放されたんだ、と考えるようになっていました。

そう考えるようになったのは看護師3年目くらいだったでしょうか。患者の死に間に合わず、立ち会えなかった家族や、患者の死を受け止めきれないでいる家族から、本人は辛かったんでしょうか?と聞かれる事がとても多かったのです。私自身が患者の死は辛いものと考えていたので、最初は家族にかける言葉が見つからず悩みました。

しかし、経験を積むにつれて考えが変わっていきました。癌患者の多くはターミナル期になるとこれといった治療もできず、疼痛コントロールで麻薬を使用します。胃癌患者に於いては食事が食べられず嘔吐して辛い日々を送りますし、癌のみならず肝硬変の悪化では高アンモニア血症となり、人格がまるで変わってしまい、その姿は家族にも大きな衝撃を与え、付き添う家族に対しても大きな苦痛があります。

そのような事を考えると、患者の死は悲しいものですが、それは周りの残された者がうける感情であって、患者本人は辛い毎日から解放されたのだから、頑張り抜いたことを褒めてあげるくらいの気持ちでいるべきなんだと思います。そして、人が頑張って生き抜いた人生の最期の瞬間に家族や大事な人たちが間に合うことができた、という事はとても重要です。

このように患者の死を捉えるようになってからは、患者の家族に対しても、ご本人は本当によく頑張られました、とても穏やかな顔をされています、と声をかけられるようになりました。また、患者の最後に間に合うことができなかった家族にも、最期は苦しむことなく安らかに亡くなられました、とお伝えしています。何よりもその言葉で救われ、安堵の表情を浮かべられる家族を多いように思いますし、看護師自身も救われる気がします。

看護師をしていると、患者の死というものは必ず関わってくる事だと思います。残された家族のためにも、亡くなった患者、家族への対応はスムーズにしたいですが、死そのものに対しては何年経ってもなれることなく向き合っていけたらいいですね。

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